2005年11月02日

『シェルタリング・スカイ』



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映画のほうでも有名な作品(音楽が坂本龍一)。Amazonの評価では二分してる。映画はラブストーリーと言われてるのだけど、原作のこちらはそれほどラブストーリーというわけではない。

砂漠。太陽。病。遠くに見えるラクダの群れ。他国に我が物顔で進駐する西欧の軍隊。不潔な宿、粗悪な食事。幻想にも似た世界がここにある。

アフリカの過酷な地を、ポートとキットの夫妻、その友人のタナーの3人はあてもなく旅する。富裕な彼らがなぜこのような旅に出たのか、多くは語られない。有閑の気紛れか、それとも何かを求め続けてたどりついたのか。

奇妙な三角関係。3人という関係の中で、1人を独占する上で残る1人が目障りという感覚。それはむしろ、独占欲というより、仲間外れにしてやりたいという子供じみた残酷な感情。しかし、念願を果たして2人きりになったとき、できたのは互いを傷つけ合うことだけ。孤独。タナーだけはその楽天的な性格で、それを理解することはなく、アフリカの地に染まることもない。

ポートは病に倒れ、高熱と糞尿と血へどにまみれて死ぬ。キットはつかの間ポートへの愛を感じたあと、行きずりの男たちに身を任せ、最後は母国へと戻ることを拒否して再び砂漠の街に消えていく。彼女の突飛な行動は脳炎感染のせいなのか、それとも彼女の望みなのか。

2人にとってこれが「幸せ」だったのかはわからない。が、後悔はそこには見られない。現代文明という檻の中で生きることは、彼らにとっては死より恐しい、何よりも耐えがたいこと。本書の紹介文にある「過酷な運命」というほど、私は彼らに過酷さを覚えない。