2012年02月20日
_ [computer] 『書籍制作フローを変える。「ReVIEW」という解。〜マークアップと自動組版と、時々、電子書籍〜』の講演を終えて
昨年の名古屋の「DTPの勉強部屋」、東京の「DTPの勉強会」と2つのセミナーに参加してDTP関係の知人が増えたり、せうぞーさんからの強いプッシュがあったりといった縁で、PAGE2012で、ReVIEWの開発や自動DTPについてお話させていただく機会をいただきました。
……って、PAGEですよ? DTPオペさんや印刷屋さんの巣窟ですよ? 派手でコンパニオン揃えてるのはモリサワとかJustシステムですが。1人の参加者として眺めにいくことはあっても、自分が話す立場になるとは……うーん、でも少し思ってはいました。ずいぶん早くにそういう機会を得られたなという気がします。
お声かけいただいたYUJIさん、そして会場にいらして席を埋め、立ち見までしてくださっていた皆さん、本当にありがとうございました。
資料PDFを公開しているので、適当にご覧いただければと思います。
以下は発表内容に関係があったりなかったりの雑談です。
改めて思うに、自分は執筆者であり、編集者であり、エンジニアであり、そして自由を望むフリーソフトウェア愛好者なのです。中身のよくわからない、いつまでデータの一貫性が保持できるかわからないベンダーロックインや、バイナリで固められた複雑怪奇なドキュメントシステムはまっぴらごめんです。
Chad Fowler氏は『情熱プログラマー』(オーム社)でこう語っています。「自分の人生を他人任せにするな」と。アプリケーション開発マネージャ時代の「JavaEEのアーキテクトになりたいです」という部下の言葉にがっかりし、「自分が雇われているわけでもない特定の会社によって作られた特定のテクノロジの上にキャリアを築こうとしている」と彼は感じました。
PAGEを訪れる人はAdobeのソフトウェアで真剣にビジネスをされている方々が多いだろうと推測します。Adobe、Microsoft、あるいはその両方(!)の製品に依存したビジネスを展開しようとする企業ブースもいくつか目にしました。
でも、ある日、Adobeがなくなったら、それに依存して積み上げてきたビジネスとキャリアはどうなるのでしょうか。そうでなくても、Adobeのある製品やサービスに基づいてリソースを投入してきたのに、ある日突然Adobeがその製品をぱったり止めることはあるかもしれません。バージョンアップによって、ニッチに実現してきたことが全部だめになるかもしれません(AppleのOS Xではよくあることですね)。あるいは大幅なライセンス料金アップでとてもついていけない状況になるやもしれません。はたまた、秘技と自負していたテクニックがワンクリックで誰でもできるようになり(これは良いことなのかもしれませんが)、突如としてオフショアを含めたひどい低価格競争にさらされるかもしれません。
ソフトウェアを使うことが悪いわけではありません。むしろどんどん使い、さまざまな知識を吸収し、世の中をより良く、より素晴しく、より便利にしていければと思います。しかし、ソフトウェアに使われ、閉じ込められてしまうのは断固避けるべきです。
……やれやれ、またリセットです(笑)。
「ReVIEWが原稿フォーマットのスタンダードになる」という予言はネタ半分ではありますが、残り半分は本気でそうしたいと考えています。ソフトウェア開発者たるもの、そのくらいの意気ごみはあってもよいでしょう? もちろんReVIEWよりももっと良いフォーマット——ツールに強く縛られず、好きなようにいじれるフリーソフトウェアで、著者として書きやすくて、編集者として編集しやすくて、拡張できて、簡単に別のフォーマットにもできる——が登場してそれがスタンダードになるなら、諸手を挙げて大歓迎です。
しかし、ReVIEWほどの気楽さで執筆、編集、拡張できるものは私は未だ見い出していません。
技術書の執筆者としてプレインテキスト、ワープロ、LaTeX、SGML、XML、HTML、EWB、Wiki、Microsoft Word、Adobe InDesignなどなど、多数のフォーマットでの執筆を試行錯誤してきましたが、「執筆」という本来の行為に集中できるものはごくわずかです。さらに編集者・DTPの立場から見て、容易に編集作業・紙面化(あるいは電子化)できるという条件も満たすもの、となると一体何が残ると言うのでしょうか。
ReVIEWをはるかに超える良いものが登場するまでは、ReVIEWをそのスタンダードへの地位にするという秘かな野望を実現すべく、開発、改良を続けていくことでしょう。設計の見直しが必要な部分はまだまだたくさんありますが、青木さん、高橋さん、角さん、ユーザーの方々の力と共に1つひとつ解決していきたいと思います。
P.S. でAdobeさん、InDesign CS5.5のPDF直接生成でのバグ報告に反応するか直すか、CS4以前のPDFライブラリに戻すパッチはまだですかね……。