2012年09月18日
_ [review] OpenBlocks AX3
8月初旬にぷらっとホームさんからOpenBlocks AX3 ( http://openblocks.plathome.co.jp/products/ax3/ ) を評価用にお借りしている。
本当はいろいろと実験してみたかったのだが、最近十分な時間が取れないのと、レンタルという性質から実働投入もしがたい、ということで、極めて表層的な評価となる。
お借りしたのはOBSAX3/4/DPJ7。4ポートギガビットEther、Java SE for Embeded、16GBのSSD、メモリは本来1GBだが最大の3GBまで増設した状態。
幅101x奥行142.1x高41 と非常にコンパクト(CDケースと比較した画像を参照)。ファンレスで表面が放熱シンクになっており、背面にAC差し込み口。ケースはかなり頑丈。
AC以外の口はすべて前面にまとめられている。コンソール(シリアルコンソール)とRS-232CもRJ45を流用しているので、イーサネット4つと合わせてRJ45の口が6つ並ぶという圧巻。
USBは2口、eSATAまで用意されている。eSATAがポートマルチプライヤに対応しているか確認しようと思ったのだが、あいにく擬似RAID箱を今取り出せない状態のため調べられなかった。
中まで開けてみようとしたがちょっと固くて、ドライバなどを使うと傷つけてしまいそうだったので断念。ぷらっとホームの技術掲載情報から引用。
CPU/アーキテクチャにはARMが採用されており(Armada XP Dual-Core 1.33GHz)、armelアーキテクチャ対応のOSのほか、ハードウェア浮動小数点演算を利用するarmhfアーキテクチャで利用すれば(映像系などで)より良好なパフォーマンスが得られる。
現在のOBSAのプリインストールOSはDebian GNU/Linux 6.0でarmelアーキテクチャを採用している。armhfはDebian GNU/Linux 7.0に向けてまだ開発が継続しているというくらいの段階なので、当面はarmelが最適解となるだろう。
コンシューマ向けの製品ではないため、ソフトウェアのほうはユーザインタラクションについての作り込みはさほどなく、むしろdebootstrapで作ったシンプルなDebian環境に近い。デフォルトのネットワーク設定も、DHCPでつながるわけではなく、シリアルコンソールでログインして調整するか、またはOBSAの初期設定に合わせたネットワークブロック(eth0かeth1を利用)に接続機を合わせてsshでログインして調整することになる。rootユーザアカウントがぽつんとあるだけなので、パスワードの設定、アカウントの追加などはすべて手動となる。玄人向けではあるが、DebianのCUI操作に慣れているならとまどうことは少ないだろう。無論、apt-getでいくらでもDebianらしく拡張可能だ。VNCやXDMCPなどを使えば、リモートからGUIデスクトップを扱うこともできるだろう。
機構としては、フラッシュROMから展開される124MB程度のRAMディスクにSSDをunionfsでかぶせるという手法になっており、/etc/network/interfacesの変更後など必要に応じてflashcfgコマンドでフラッシュROMを更新する必要がある。
root@obsax3:~# df -m Filesystem 1M-blocks Used Available Use% Mounted on /dev/ram0 124 97 22 82% / udev 10 1 10 2% /dev tmpfs 64 1 64 1% /dev/shm /dev/sda1 14091 498 12878 4% /.rw unionfs 14091 498 12878 4% /etc unionfs 14091 498 12878 4% /bin unionfs 14091 498 12878 4% /home unionfs 14091 498 12878 4% /lib unionfs 14091 498 12878 4% /sbin unionfs 14091 498 12878 4% /usr unionfs 14091 498 12878 4% /var unionfs 14091 498 12878 4% /root unionfs 14091 498 12878 4% /opt unionfs 14091 498 12878 4% /srv unionfs 14091 498 12878 4% /media
いくつかパッケージをインストールし、コンパイルなども実行してみた限りでは、CPUおよびメモリに十分なパワーがあることもあり、使い慣れたx86と何ら遜色はない。コンパクトかつファンレスでOSの自由度の高いサーバ/ルータ/ファイアウォールとして、Debianに慣れたネットワーク管理者には非常に魅力的な製品だ。Debian armelの開発環境としてもハイスペックで、Debian armhfのデファクトなリファレンスになりそうな雰囲気もあり、Debianで組み込み開発を進めている人にも重宝されるだろう。
1点気になるところとしては、その発熱の大きさだ。放置していても上面の放熱フィンが触われないくらい熱くなるので、sensorsを入れてCPU温度を計測してみたところ、外気温28℃の状態で、アイドルで80℃、少しストレスをかけると容易に90℃をオーバーする。ケース側は触れた感覚では50℃前後だろうか。料理温度計で計ろうとしたが形状的にうまく計れなかった。←追記しましたが、発熱は初期不良でした。
本体自体は熱への強さをぷらっとホームさん自身が謳っているので問題なさそうとは言え、紙やビニール系(たとえばACアダプタのケーブルなど)のものが接触しないよう注意が必要だと感じた。ぷらっとホームさんの回答では、CPUの消費電力で発熱はするものの、内部コンデンサへの110℃/140℃品の採用や、匡体放熱で動作に影響はないとのことだ。ケーブル類が整理された環境であれば問題になることは少ないが、家庭やごちゃごちゃしたオフィスで使うときにはちょっと周辺環境を気に留めたほうがよさそうである。
オフィスでは現在もぷらっとホームのOpen Micro Server( http://openblocks.plathome.co.jp/products/oms400/price.html 、mipselアーキテクチャ)+Debianが現役でルーティングに活躍している。当初はカーネルに起因する障害でぷらっとホームさんといろいろ検証作業をすることになったが、今ではとても安定化しており、信頼性の高い高機能ルータとなっている。 とはいえ、Open Micro Serverはすでに販売終了しており、OpenBlocks 600ファミリではイーサ3ポート以上というオフィス利用での要件を満たすことができず、万が一故障・復旧不能になったときの代案は頭の痛いところであった。 ギガビット4ポートを選択できる本機は、Open Micro Serverの正当なる後継者として大いに期待が持てる。
#とはいえ、OMSがまだ丈夫で壊れておらず、AX3がなかなかお高いことは確かなので、調達は悩ましいところではあるのです……。Bフレッツニューファミリ程度だとOMSでさほどの速度低下はないし。
追記
記事に書いた高温発熱や、ファイルシステムを作成するだけで奇妙なカーネルクラッシュが発生するなど、どうも本体の不良が懸念されたため、2013年3月にサポートに連絡した。3月24日に交換品が届き、室温状態でアイドル55.9度で安定するようになっている。ほんのり程度の暖かさとなり、これなら確かにまったく利用に問題ない。